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瓜とナツメグ

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ヤニック・アレノ氏が再オープンしたパリのグランメゾン、「ルドワイアン」に行った。

シャンゼリゼ大通りに所在する老舗は景色が良い。いや、「優雅」と言った方が正しいだろうか。パリで珍しく開けたダイニング。灰色の秋でも空気が黄金に映る空間。

 

食事はもちろんシャンパンで始まる。

食事はもちろんシャンパンで始まる。

場所は申し分ない。サービスもトップクラス。さて、肝心のアレノ氏の料理はどうだろうか?

 

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玉ネギのなんとか。ああ、忘れちゃった。でもおいしかった。特にスプーンに乗っかているフユテは美味。

ご本人は「フランス料理はソースだ。しかし古いソースはもう嫌だ。僕は新しいソースを作った。レデュクションでなく、エクストラクションなんだよ」という。

「レデュクション」は煮詰めること。「エクストラクション」は抽出すること。彼の論理は、説明されるとすんなり分かったような気になる。

まず真空調理をする。次に袋をあける。同時に最後に汁を吸い取る。

確かに、真空調理の袋を開けると素材の汁がでる。もったいないから、それを、流れ出てしまわないように抽出して、ソースにするのはグッドアイディアだ。

論理はいいが、実際食べるとどうかな?

 

オマールのブーダン、アメリカンソース。

オマールのブーダン、アメリカンソース。

最近フランス人が目覚めたのが魚だ。肉を捨てたわけではないか、最近一首の魚ぶーむだ。ちょっと極端だと私は思う。

なにも魚ばかりいきなり料理したからって、魚料理がうまくなったわけではない。

アレノ氏のいう「新ソース」は当然肉より魚に当てはまる。肉はクラシックな「古いソース」を使っているように見えた。自慢の新料理は全部魚だった。

 

ブロシェ(鱒の一種)。すり身っぽい。鮨屋の玉子を思い出す。

ブロシェ(鱒の一種)。すり身っぽい。鮨屋の玉子を思い出す。

私は「新ソース」を特にどうとも思わなかった。決してまずくはないが、飛び上がるほどウマイものでもない。

これが調理法・技術・理論を覆すかどうかは、食べる側としてはどうでも良い話だ。

一人のお客として食べて「革命だ!」と感動するものでもない。

白く濃厚だったフランスの「古い」ソースが、中華風に透明になったくらいだと思った。

 

ムール貝と煮汁。上のチュイルは上出来。

ムール貝と煮汁。上のチュイルは上出来。

しかし、なかなか上品な味で、アレノ氏らしく洗練され都会的料理だ。

素材の火入れも申し分ない。

では、今のパリでこのお値段を払ってこの料理を食べる必要があるか?

 

ラングスティーヌはやはり高級感がある。半透明ソースはくずゆみたいだ。とても上品な味。

ラングスティーヌはやはり高級感がある。半透明ソースはくずゆみたいだ。とても上品な味。

最近、ビストロノミーと称する、コストパフォーマンス抜群のレストランが目立つパリだ。

一人60~100ユーロでおいしいものがいくらでもある。

だからこういうグランメゾンは存在の意味を失いかけている。

お客は「花の都パリ」に憧れる観光客と、フランス人でも安い=不味いと単純に捉えるデモデ(直訳:流行はずれ)なブルジョアか、スノビズムで通うナリキンに限られていくような気がする。

 

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帆立とキャヴィア。味は微妙に違うが、ソースは前のラングスティーヌと似た感じ。

感心したのはむしろ2点。

まずは、群馬の和牛。

フランスに輸入されるようになってから、ちょっとしたモードを引き起こした和牛だが、到底フランス料理には向かない。

脂がきつすぎて、薄くしゃぶしゃぶやすき焼きにするのが一番おいしい。フランス料理のように厚く使うと、脂を含んだスポンジみたいでまずいと思う。

 

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群馬牛。これはウマイ。付け合わせは「ギョウザ」。こちらはかなり奇妙。

しかし、アレノ氏の和牛は最高だった。

シンプルにステーキのように焼いただけだが、塩をよくきかせて、脂のしつこさを引き締める。

同時に、普通のフランスのステーキだったら、焼き過ぎるくらいのやきかげんが非常に良く合う。ミディアムレアまで焼き、脂を落とすのだ。

 

さすが老舗、こういうおじいちゃんが一人でランチをしているな。と、思ったら、もしかしてこ方、有名な料理評論家じゃない?

さすが老舗、こういうおじいちゃんが一人でランチをしているな。と、思ったら、もしかしてこ方、有名な料理評論家じゃない?

2点目は、デザートだ。

昔、ムーリスでアレノ氏のシェフパティシエを務めたカミーユ・ルセックの創作は、いまだに私が出会ったデッセールの中で類の無い傑作だった。

私の人生で最高のレストランパティシエだったと思っているが、なかなか今度のパティシエもよくできる。

はてな、アレノ氏はパティシエを選ぶのが妙に上手?

 

チーズは至ってオーソドックス。

チーズは至ってオーソドックス。

デザート2品とミニャルディーズ、現代的且つ美味。デザート嫌いの私でも目を見開くほど。

軽い。しかし味もしっかり。決して存在感が薄くない。

深みもある。そして100%モダンなオシャレ感覚。

名前も知らないが、将来の大物を前にしたと思う。

 

リンゴのプレ・デセール。きれいでおいしい。中央はタルトタタンを一口。

リンゴのプレ・デセール。きれいでおいしい。中央はタルトタタンを一口。

 

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チョコレートと白トリュフのデザートはすばらしかった。濃厚で軽い、大人の甘味。

 

ミカンとミカンのジュレ。こちらもすごい!爽やかで味がしっかりある。酸味と甘みと食感、すべてが明快。

ミカンとミカンのジュレ。こちらもすごい!爽やかで味がしっかりある。酸味と甘みと食感、すべてが明快。

 

ミニャルディーズもモダン。これ、なんだったかな?不思議なおいしさだったのは覚えている。

ミニャルディーズもモダン。これ、なんだったかな?不思議なおいしさだったのは覚えている。

 

ビールのタルト。感動してしまった。ビールの味というよりも、クリーミーでサクサク、味と食感の遊び満喫。シンプルな外観がまたおしゃれ。

ビールのタルト。感動してしまった。ビールの味というよりも、クリーミーでサクサク、味と食感の遊び満喫。シンプルな外観がまたおしゃれ。

 

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トリュフも最高。チョコレート嫌いの私でもついつい手が伸びてしまう。全部食べちゃった!

数日後に電話をしたら、受付のお姉さんが「名前が変わりました」と。

「ルドワイアン」が「レストラン・アレノ・パリ」に変わるらしい。

ダサいな。「ルドワイアン」の方が数倍カッコウいいのになぁ。

 

メニューはややこしかった。シェフお任せだったので、解読しようとしなかったのが悪かったかな。

メニューはややこしかった。シェフお任せだったので、解読しようとしなかったのが悪かったかな。

ランチメニュー135ユーロ

デギュスタションメニュー250ユーロ

ア・ラ・カルト250ユーロ~

Pavillon Ledoyen (Restaurant Yannick Alléno Paris)
1 Avenue Dutuit
75008 Paris
Tel: +33 1 53 05 10 00