今日は、待ちに待ったパリの初夏の夕方。6月中旬も近づくというのに、ずっと雨と寒い日が続いたパリは、ノルマンディー上陸作戦70周年記念日に、魔法のように晴れた。

パリのテラスは満席だ。寒い国の人間はちょっとでも天気がよくなると、一斉に外に出たがる。

ピルエットは、トミー・グセという、若いシェフの店。手ごろなお値段でちょっとおしゃれな食事ができ、ワインもコストパフォーマンスが抜群らしい。

オープン数週後に一度行き、あまり感動しなかったが、今晩は違った。中々良いではないか!

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アミューズはサブレ、キュウリ、フロマージュ、そして鱒の卵とベルベナの葉。さっそく、夏の香りだ。

右手は、小さなロティ。

ロティは、フランス語で「ロースト」を意味するが、昔のフランス語で「トースト」でもある。フランス伝統料理で「ロティ」というと、鳩など鳥類のレバーペーストに臓物を練りこみ、薄くスライスしたパンに塗り、オーブンで焼いたものだ。コクがたっぷりの、なかなかおいしい食べ物だ。

このミニ・ロティは甘みが強く、カリカリッ、よりもネットリだが、それはそれでかなりおいしい一口だ。

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アントレは、ニョッキ、アプリコット、ジロール茸とベルベナの葉。鮮やかな緑のオイルは、ベルベナオイルかな。

ニョッキはクリーミーなソースと合う。このニョッキも、パルメザンチーズか、もうちょっと淡いチーズかも知れないが、塩気の利いたクリーミーなソースに、青い香りのオイルを垂らしている。とろみと旨みがおいしい。アプリコットは、特に皮のすぐ下の果肉がきりっと酸味が強く、ちょっと冬っぽいお皿を夏に持って行く。上にのっかっているベルベナの葉はパリッと揚げてある。味はすっぱくないが、香りがすっぱい。こちらもちょっとぽったりしたニョッキとクリームソースを、リフレッシュしてくれる。

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鴨のタルタル、フランボワーズとカブの酢漬け。ちょっとカブの酸が強すぎたが、同時に生の鴨を軽くマリネしてくれている。焼いた鴨を食べるとまず想像できない身の柔らかさだ。鯵のたたきの要領だが、固い脂身の少ない肉が、溶けるように柔らかく感じる。

フランボワーズは可憐なワンタッチ。こちらも、まったく甘くない、酸っぱい果実が利いている。

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鳩は抜群の火入れ。白アスパラは香ばしく仕上がっている。アーティチョークも筋がしっかり、南仏の田舎くささがおいしい。お皿の中央に、今度は本格派ロティ。やっぱりロティはこれくらいデカイのがいいな。

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連れが食べた仔羊は、試食していないからまったく分からないが、黄色いズッキーニと、小赤玉ねぎがかなりおいしそうに見えた。「一口、食べる?」と一言も言わずに、全部一人でささっと食べてしまった男友達は、ジェントルマンじゃない!仔羊の肩肉かな?はうまそうだったが、それよりも、興味深々だったのが、上に乗せてあるアンチョビのフライ。ウェイトレスのお姉さんに頼み込んで、もらったのが、これ↓

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アンチョビのフライを付け合わせに!パリで揚げ物がおいしいのは、日本人が料理をしている店だけだと私はいつも主張するが、これはなかなかいけるじゃないか!アンチョビは軽くレモンかな?何か酸味を含んでいる。醤油につけてご飯と食べる味ではない。むしろ、イキな白ワインと、タパスのようにつまみたい。

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オソーイラティはバスク地方とベアルヌ地方の羊のチーズ。生クリームを加え、チーズケーキのように仕立てたデザートは、もはや「ピルエット」のシグニチャデザートだ。シェフのトミー・グセが老舗「タイユヴァン」で修行をした時から、作っていたという、パリの古典の一つかもしれない。上と横に、さくらんぼのコンフィチュール。滑らかなジャムだ。このデザートは、日本のレアチーズケーキが恋しい人には、絶対お薦めです。

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デザート嫌いな連れは、そのままのオソーイラティを強請った。一切れもらったが、これは上質だ。固そうに見えるが、固くなく、でもカマンベールみたいなフランスチーズではない。山の固いチーズの分類に属するが、チーズ臭さというのか、きつさがまったくなく、味も香りも食感もとても繊細なチーズだ。よく見ると、七味唐辛子が一つまみ。なるほど、この香りの調和は、ピリッと一ひねりを与えて面白い。そういえば、デザートにもついていたな。

ピルエットはフランス語でコマや、爪先旋回のこと。つまり、くるくる回ることなのだ。

カカウエットはピーナツを指す。フランスの童謡で誰でも知っているのが「ピルエット、カカウエット」。

「小さな男がいた、ピルエット、カカウエット

その男は変な家に住んでいた

その家は厚紙でできていた、ピルエット、カカウエット

階段は紙でできていた

上ろうとしたならば、ピルエット、カカウエット

鼻を折っちゃうよ・・・」

と続く歌。

Pirouette
5 rue Mondétour 75001 Paris
Tél: 01 40 26 47 81

場所はパリ中心街レ・アル界隈の歩行者天国地域。だから、夏の夕方のテラスは気持ちが良い。
ランチメニューは15ユーロでこの界隈では特にお買い得。
ピルエットメニューが40ユーロ。オードブル+メイン+デザート。
シェフお任せメニューは60ユーロ。