今宵は素晴らしかった。外食嫌いの夫を説得して、二人の晩餐へ。しかしこの幸福は、穏やかな「良き伴侶」がいっしょだったこともあるが、それだけではなかったような気がする・・・

「ルカ・カルトン」のシェフ、ジュリアン・デュマ氏に「夫と二人のロマンチックディナー」と言ったら、立派な春のメニューを考えてくれた。「ロマンチック」?というよりも、かなり満足—お腹が出っ張るほど満腹になった。

最近の若い小食の客たちは、腹八分目が良いと言うが、私は昔から、ひそかにズボンのチャックを開くくらいに、パンパンになるのが好きなのだ。

レストランという場所は、夜になると照明を落す癖がある。ムードはあるけれど、写真にはうまくない。料理の色が悪く、不味く見える。それでも私の幸せを読者の方々が少しでも感じでくれたらいいんだけど。

 

まずはシャンパン。新作ロワイヤル・ブルー・スカイ。

まずはシャンパン。新作ロワイヤル・ブルー・スカイは初公開がそうだ。しめしめ。

 

真のシャンパン愛好家は、氷と一緒に出されるこのポップな飲み物を好まないだろう。でも、私は好き。たまにはこういうのもいいと思う。それにもうすぐ夏だし。パリの夏の夜は、ブルーの光を放つから。

 

lucas carton 160422-1390644

アミューズ。少し温かい塩味のマドレーヌ、タルトレットとチュイル。

 

lucas carton 160422-1390651

ラングスティーヌ、キュウリ、乳製品。

 

美味!ラングスティーヌは半生くらいか。かなり微妙な火入れは、甲殻類で一番デリケートなこの身を、淡い酸味のヨーグルト、レモンの皮、レ・リボ(発酵乳)のエミュルションと合わせて見事に演出。エミュルションは香り高い、甘味のあるキュウリの薄切りで巻いてある。そのビロードのようにしっとりとしたテクスチャー、でもシャキっとキュウリらしい香りと瑞々しさ。

すべてを一緒に味わうためには、スプーンを使って一口で食べなくては!下にはグラニー・スミス林檎とルバーブの角切りがしかれている。アクセントに<キャシーの胡椒>が効いている。

台湾人の友人キャシー・ホーにもらったから、私は勝手に<キャシーの胡椒>と名付けた香辛料。学名は litsea cubeba。中国、インドネシア、台湾の低木で、中国語では「山胡椒」、タイヤル族(台湾の原住民)の言語では「馬告」(マカオ)と言われているらしい。

 

マカオ、通称キャシーの胡椒

マカオ、通称キャシーの胡椒

 

一見して、花椒に似ているが、味は違う。こちらのマカオのほうが、清々しく柑橘のような酸っぱさと香があり、辛みがない。

マカオの実から抽出したオイルは、レモングラス、ヴェルヴェーヌ(バーベナ、クマツヅラ)、オレンジ、レモンのエッセンシャルオイルにもある、シトラールやレモナルが約80%を占めている。レモンやオレンジのような柑橘とも違う、レモングラスともまた違う、不思議な香りの実だ。

 

lucas carton 160422-1390654

グリーンアスパラ、グリーンオリーブのタプナード、コリアンダーの実と花、

 

春らしい草花の一品。相変わらず、ドレサージュ(盛り付け)がぎこちないが、香りと味の遊びは抜群だ。

ジュリアン・デュマは、こういう「青味」が特に上手。

 

lucas carton 160422-1390657

最初の白ワイン

 

lucas carton 160422-1390659

次の白ワイン

 

「ルカ・カルトン」では、いつもワインに驚かされる。選択、料理との相性、展開、すべて。尖った現代性でもなく、過度に伝統的でもないそれらのワインはとてもエレガントだ。普通のワインペアリングでは、必ず一つは「これは、ちょっと」と思うワインがある。しかし「ルカ・カルトン」ではがっかりさせられるワインが出てこない。それだけでも珍しい。ワインのペアリングメニューを開拓した巨匠、アラン・サンドランス氏の教えを立派に受け継いでいる。

 

lucas carton 160422-1390663

ティエリー・ドゥラーブルのパン

 

時折、ソースを拭うには固すぎるときがあるパン(時間や日にちが少したったせいなのかな?)

でも、今日のパンは完璧。ティエリー・ドゥラーブル作パンで私はお皿のソースをきれいに平らげた。

パンは、美味しいと、フランス料理の最高の「一品」だ。

 

lucas carton 160422-1390665

モリーユ、イカ、パトリック・デュレールの生ハム

 

シェフが一年間試作して見いだした温かいアントレ。すでに去年、完成したと思っていたら、今日はさらに大きな一歩を超えた。炙ったイカは香ばしさと触感。生のイカは甘みと、あの独特な、ねっとりしたテクスチャー。パトリック・デュレールの生ハムとラムソンと美味なジュ・・・お見事。

 

lucas carton 160422-1390670

舌平目、キンカン、キャピュシーヌ

 

厚みも味もしっかり、肉のように旨みを噛みしめる舌平目。バターと良く合うこの魚は、高級フランス料理—つまり魚を肉のように扱う料理—の中で私が一番好きな白身魚。特に「ソール・ムニエル」は傑作だと思う。
ジュリアン・デュマはグルノーブル出身だが、だからか前回食べたグルノーブル風の舌平目も最高に旨かった。今日はムニエル風だが、ソースはフルーティでちょっと甘酸っぱいキンカン。付け合わせは、アスパラの先とキャピュシーヌ(キンレイカ)の葉のエミュルション。

旨みの一品、今春の傑作(の一つ)。

 

lucas carton 160422-1390674

アンコウ、貝、ヴェルヴェーヌ、メリス

 

アンコウはクナーフェを巻いて揚げてある。貝汁はアサリ、マテ貝、メリッサとヴェルヴェーヌを浮かせた、なぜかみそ汁を連想させるソース?スープ?

こちらはあと一歩、進展の余地あり。ハーブの香りと甘味がおいしく、揚げた魚の衣も感じが良い。なにが悪いのかよく分からないが、少々熟成する必要があるかな。次回の展開が楽しみだ。

 

lucas carton 160422-1390680

三番目の白ワイン

 

lucas carton 160422-1390683

子羊、ブレット、ピーナッツ

 

lucas carton 160422-1390686

クローズアップ。しつこいけれど、美しい肉には弱いのよ。

 

ピレネー産乳飲み子羊にブレット(フダンソウ)のコンディマンと葉。ピーナッツと柑橘のコンディマンも。

一応ナイフで身を切り落とす。誰も見ていない隙に、骨を指でつまんでかじること。禁じられた遊びって、特に美味しいのよね。

 

lucas carton 160422-1390689

うお~!

 

lucas carton 160422-1390694

シェフとトゥルト

 

「パイの四分の一でいいよね?まさか、半分ずつ食べないでしょう?」とシェフ。

「ん?まさか?もちろん半分ずつ食べるわよ。他のテーブルと分けてもいいわよ—なんて、冗談じゃない!セコイこと言わないで、早く食べさせてよ」

 

lucas carton 160422-1390696

鴨のトゥルト、ベトラーヴと鰹節のケチャップ

 

でも、近くからみたパイは、結構デカかった・・・

今までたくさん食べてるからなぁ。半分だけでも結構なボリューム。

パイ生地は薄く、完璧。ファルスは自家製オールスパイスで軽やかに。立派なフォアグラもどっさり詰まっている。鴨のフィレは、火入れ抜群で真っ赤っか。ジューシーに噛み応えがある。

ソースは、ベトラーヴと鰹節のケチャップ。一応サラダも食べました。

実に美味しかった。しかし、驚いた。ジュリアン・デュマの普段の料理はクラシックフレンチからかなり距離を置き、若くフレッシュだがいわゆる斬新とも違う、がむしゃらに完成度を追う現代の料理界では珍しい、ちょっとずっこけたようなナチュラルなスタイルが魅力なのだ。それが、かっちりしたトゥルト(パイ)が作れるとは。一見雑然とした雰囲気の中でしばしば隠されている高等技術が示されている。

 

lucas carton 160422-1390706

柑橘のヴァシュラン

 

甘みと酸味の調和が綺麗なデセール。

 

lucas carton 160422-1390709

本日最後のワイン

 

最後のワインまで真っ直ぐな立体感があり、おしゃれな流れだった。

 

lucas carton 160422-1390712

二人で分ける巨大エクレア

 

lucas carton 160422-1390714

プラリネとコリアンダー、キャラメルのクレームシャンティと共に。

 

これだけ食べれば、さすがにお腹一杯。

パリの春の晩餐、大変満足いたしました。

Lucas Carton
9 place de la Madeleine
75008 Paris
Tél : 01 42 65 22 90
http://www.lucascarton.com/