悲しいフランス

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海でボンヤリしたかった。

2泊3日の小旅行、ノルマンディ北部ーの海辺に出かけた。

職業柄、レストランや食べ物をじっくり見て、食べるのが習慣になっている。食べ物が、快楽でなく、仕事になると、バカンスも楽しくない。だから、今回は、「食べ物にはこだわらない、なんでもいいから、そこら辺のレストランで食べよう」と夫に言った。

それでも、いざとなると、やはり気になるものだ。。。

ここは、ヴレット・スュール・メール。アルセーヌ・ルパンで有名なエトルタと、漁港で有名なフェカンの間にある、小さな小さな町。町と言っても、海に10軒ほど家が面しているだけ。そのうちの一軒がホテル・レストラン。地上階がレストラン、その上に10部屋のホテル。名は「レ・フレガット」(日本語で「フリゲート」というらしい)。

なかなかいいところだ。なーんにもない。ノルマンディーの灰色の秋の空を眺め、青でもない、緑でもない、淡い色の海を眺める。ル・アーブルからサン・ヴァレリー・アン・コーまで、崖が連なる地域だ。

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ノルマンディーは、乳製品、特にクリームとチーズで有名だ。カマンベール、リヴァロ、ポン・レベック、ヌシャテル・・・。フランスのチーズといえば、ノルマンディだ。

牛肉といえば、シャロレ牛。大人しく人懐っこい牛らしい。

 

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カキはプルヴィル・スュール・メール産。さすが地元、鮮度もよく、さらっとおいしい牡蠣だった。

 

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エビはパリの自宅の近くにある、高級魚屋の方がおいしい。ビュロ(ツブ貝の一種)は、「並み」でした。

 

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地元のスペシャリテと言われる、オーモニエール(昔ベルトに下げた小袋)。中にはチーズ(何チーズかは不明)、アンデゥイユ一切れ、そしてリンゴ。忘れるところだった、ノルマンディーといえば、リンゴの都。リンゴタルト、シードル、カルヴァドス。

でも、この「小袋」、「名物」の割にはあまりぱっとしなかった。

 

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鯖は、圧倒的に日本の塩焼きの方がおいしい。グリルする前に、魚に塩をする習慣がないのかな。気の抜けた鯖だ。魚そのものはまずくない。しかし、クリームとシードルのちょっと甘いソースとまったく合わない。さらに、ラタトゥイユ(南仏)と、ズッキーニ(南仏)と焼きトマト(南仏)。プロヴァンスの味と、ノルマンディーの味。北海道名物と九州名物を同じ皿でミックスしたようなものです。精神分裂症になりそうな一品。料理人が凝りすぎると怖い怖い。

 

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こちらはムール貝。「ムール」と書いてある鍋は、もはやフランス全国で見かける。それでも、かわいい。

 

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蓋を取って、殻を入れる。

「ブショのムール」(moules de bouchot) は、北の人間に言わせると「本当のムール」。「スペイン産の大きいムール貝はムールじゃない」と北の港、ブーローニュで生まれた義理の母は言う。確かに、ブショのムールはおいしい。スペイン産のデッカイのよりは味が凝縮していて、食感も良い。

 

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最近カフェなどで流行っている、「カフェ・グルマン」と「テ・グルマン」。私はカフェが飲めないので、もっぱら紅茶の「テ」。この「グルマン」と称するものは、こちゃこちゃと、一口ずつ「甘味」がつく。せせこましく、世知辛く、そして当然ながら、どれも念入りに作られていないので、マズイの盛り合わせのようなものだ。スーパー産のマカロン、キャンディ。

目に付くのが、なるほど、田舎でも最近はアルドワーズ(粘板岩、スレート)を使うのだ。それにカカオパウダーなどを塗して飾る。ノルマンディの、単純でおいしいリンゴのタルトは何処?

 

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翌日、昼。フェカンで。

フェカンは今でも漁港だ。魚市もある。

おいしい魚があるだろうと、期待して入ったが、は・ず・れ。

 

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またでた、粘板岩!燻製の魚の盛り合わせ。昨日の「テ・グルマン」に続いて、今度は「魚グルマン」か?

一つは一つはまずくない。スーパーの燻製魚ではない。サーモン、ハドック、鯖。でも、なぜ変なプラスチックのヴェリーヌに、クリームソースがつくの?パンは、フランスパンでなく、食パンを片面だけトーストした、それこそスーパーの一番安物のパン。それに、またトマト、今度はコンフィ!

悲しくなってきた。

 

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次のオードブルは、メニューに「名物」と書いてあった、テット・ド・ヴォー、仔牛の頭。

こちらはなんと貧弱な。ああ、昔は、普通の丸いお皿に、山盛りの仔牛の頭に、ちゃんとしたソースが添えられてきたものだ。

ますます、悲しい。フランスの田舎の立派な食べ物は、衰退した。

 

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シュークルート・ド・ラ・メール、海のサワークラウト。なんとなくいやな予感がしたが、フェカンの港沿いのレストランン全てがこれを提供するので、一度は食べてみようと注文してみた。

中央に、サワークラウト。酸味が利いた、軽く発酵したキャベツだ。これは、普通。でも、それに、魚風味のクリームをかけ、飾りにムール貝、エビ、バサバサに煮た白身魚、そしてラングスティーヌ。。。かわいそうなラングスティーヌ、一命をこんなちゃちい一品に犠牲にされたのか。

一応食べたけれど、食べ我意のないものだった。

悲しいのがだんだん腹が立ってきたぞ。

 

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おやつは観光地、エトルタで。今日は諸聖人祭り、そして、この地域は「ニシン祭り」。エトルタの浜で、漁師が歌を歌う。観光客が賑わう。

ここの崖は印象派モネが晩年描いただけあって、美しい。飽きない風景、人間消えろ。。。

 

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まったく期待せずにクレープを食べた。特においしくなかったが、飾りやアルドワーズ皿など、変な装飾もなく、普通のクレープにホッとした。

 

時代というものか。昔は、田舎、特に海では、簡単にグリルした鱸や鯖、ムニエールにしたソール、それにフライか茹でたジャガイモがついて、おいしかった。パリで食べられたない、素朴なフランス料理があった。

でも、前世紀末に、料理本、料理雑誌、料理番組などが普及し、田舎のレストランも、大シェフの真似をせざるを得なくなったのだ。食品そのものにかけていた手間とお金が、装飾に回ってしまったのだ。

日本もそうだ。最近、やたらと格好をつけたラーメン屋やそば屋、お好み焼き屋などが流行っている模様。

ああ、でも、悲しいフランスの田舎。まずくなった。

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